2016年2月25日木曜日

【読書】悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か

「悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か / 倉前 盛通」
を読みました。

これは、古い書籍ですが十分に今でも通用すると思います。
最初は、眉唾ものの話だろうと、読んでいたのですが
色々と今の情勢と照らし合わせると、正しいと思うことも多く
こんな考え方もあるのだと改めて衝撃を受けました。
これは、必読の書ですね。
今後の自分の考え方にも大きな影響があるはずです。
(いつものように、自分のために残しておきます)



大陸国家と海洋国家とで、地政学の趣が異なる。

海洋国は、
海洋交通の自由、貿易の自由、物資交流の自由を重視し、
そのための戦略を考える。
それに対して、大陸国は
閉鎖的な自給自足と、生存圏としての一定領域を
考える傾向が強い。

日本はいうまでもなく海洋国であるから、
地政学の発想も海洋型でなければなるまい。


事実、明治二十年代から大正のはじめの
日本の戦略は明らかに海洋型であった。
大幅な国力の伸長をみせたであるが、
不幸にして大正七、八年頃から昭和二十年頃までの間は、
日本の陸軍参謀本部を中心とする勢力が、
ドイツ流の大陸国家型地政学に心酔してしまった。
ここに日本の失敗の最大の原因がひそんでいた。


日本の繁栄は海洋型戦略の中にあり、
断じて大陸型の閉鎖戦略の中にはないことを
もう一度、確認しておく必要がある。


商社が侵す積極的「悪」よりも、
閉鎖的な左翼政治勢力の侵す消極的「小善」の方が、
はるかに、日本を毒し、衰退させるものであることを再認識すべきであろう。

大東亜戦争は昭和十九年のサイパン島の陥落をもって
実質上、勝敗が決した。
ところが案外、このことが認識されていない。

アルフレッド・セイヤー・マハンのテーゼを概括すると次のようになる。
①海を制するものは世界を制す。
②いかなる国も、大海軍国と大陸軍国を同時に兼ねることはできない。
③Sea power を得るためには、その国の地理的位置、自然的構成、国土の広さ、
人口の多少、国民の資質、政府の性質の六条件が必要である。


マハンは次のような具体的提案をも行った。
現在、世界における典型的海軍国は、英国であるが、
やがて、米国が英国に代わって世界の海軍国になるであろう。
そのためには、次のことをなさねばならない。
(a)大海軍の建設
(b)海外海軍基地の獲得
(c)パナマ運河の建設
(d)ハワイ王国の併合


日本も1895年の日清戦争で台湾とその周辺の島を獲得し、
1905年の日露戦争で南樺太を奪還し、
ロシアが租借していた遼東半島を清国から租借して、
旅順、大連を手中に入れ1910年には日韓併合によって、
朝鮮半島と朝鮮海峡を完全支配し、
第一次大戦が勃発するや、いち早く参戦して
1914年ドイツ領ミクロネシア群島を占領し、
1920年、国際連盟の委任統治領として世界の承認を得た。
海洋国家としての布陣を完成させた。
日本も米国に劣らぬほど、マハンの優等生であった。
戦略的には、日本の方が有利であった。


米国が中国大陸の大市場を握るためにも、
この生意気な日本を叩きつぶし、
西大西洋の制海権を自分のものにする決意を固めたのは、
1915年頃からである。
1915年から1945年の30年が日米対立の時代、
日米が海上権力を奪還しあった時期といえる。

米国は、日本を叩くための戦略として三つの政策を巧妙にすすめた。
①中国と組んで米中で日本をはさみうちにする。
 そのため中国、香港、シンガポールなどで反日宣伝を大々的に推進する。
②日本の海軍力を削減させるため、あらゆる世論工作を行い、
 ワシントン会議とロンドン会議で日英米の海軍力を三対五の比率に
 押さえることに成功した。
③日本をアジア大陸内部の紛争に介入させるように仕向け、
 海軍力拡充に向けるべき予算を、大陸での紛争に費消させる。
 たとえば、ロシアの十月革命に乗じて、シベリアへ日本軍を出兵させたのは、
 米国の巧妙な工作によるものであった。


日本が大陸政策にのめり込んで、国家の大方針を誤ったのは、
①陸軍が、1920年頃からドイツ型大陸地政学にかぶれ、
 大陸政策に深入りしたこと
②日本の目を大陸に向けさせ、海軍力の充実にまわす予算を
 少なくさせようという米国の陰謀が裏にあったこと。
 この二つに大きな原因を見出だすことができよう。

米国は目障りな日本を倒して、アジア大陸にとりついたが、
たちまち、毛沢東の共産中国の成立によって大陸から追い出され、
朝鮮半島でも多量の血を流し、ベトナムでは不名誉な撤退を余儀なくされた。
「いかなる国も大海軍国と大陸軍国を兼ねることはできない。」
というマハンのテーゼは、ここでも見事に証明された。


米国で強いのは海軍と海兵隊であって、
陸軍は所詮、二流に過ぎないのである。



スターリンも、砕氷船テーゼ採用していたといえる。
共産主義者は自ら砕氷船の役目を演じて
エネルギーを浪費するような愚かな真似をしてはならない。

砕氷船の役割はアナーキストや、
日本、ドイツのような国にまかせるように仕組み、
我々はその背後からついて行けばよい。
そして、氷原を突破した瞬間、困難な作業で疲労している砕氷船を
背後から撃沈して、我々が先頭に立てばよいのだという狡猾な戦略である。

「ソ連はいぜんロシアであり、その遺伝情報は少しも変わっていない。
十月革命によってソ連と名前を変えたからといって、
別な国が生まれたなぞと毛頭考えるべきではない」

帝政ロシアは、東ローマ帝国、
つまり、ビザンチン帝国の継承国家である。

ソ連は、新型ロシア帝国であり、恐るべき「宗教軍事国家」なのである。
イデオロギー的侵入と軍事力による侵略と経済侵略の三者を、
何の遠慮もなく強力に推進してはばからぬ国家なのである。



太平洋を例にとれば地球自転と季節風の総合効果によって、
時計の針と同じ方向へ回る海流が生じ、
それが日本列島の沖合いに押し付けられている。
そのため日本列島の流線密度は世界最大の数値を示している。
これは世界で一番大きな太平洋に蓄えられているエネルギーが、
ここに集中されることを意味する。

そのため、台風も巨大なものが押し寄せてくるし、
梅雨や豪雨をも、もたらす。
裏日本の豪雪は深さは、世界で一番深い積雪量を示すが、
これも日本海を北上する暖流から蒸発した水蒸気がもたらしたものであり、
太平洋還流のたまものである。

この世界最大の流線密度をもつ暖流によって洗われているがゆえに、
このせまい日本列島上に1億以上の人工を養うことが可能となったのである。
しかも、国土の八割は森林におおわれており、
残りの二割の土地に1億以上の人が住み、
農業を営んでいるという事実は、自然の恩恵の大きさをよく示している。

ここで、海流地政学のひとつの仮説を提起してみよう。
「二十世紀以降の主要文明は、海流流線の集中点近くに栄えるであろう」
大洋の西側は暖流の流線密度が大となる。
流線密度大なる海域に面する地域は、
雨量多く温暖で、人口密度も大となり、
産業発展の潜在力も大となる。
二十世紀以降の重要発展地域は、
人口、情報、産業、雨量の集積する地域であり、
古代文明が発生したような乾燥地帯ではない。
また、ロシアのような寒冷、乾燥の土地でもない。

現在、大西洋暖流が集中して沖合を流れるアメリカ東部が
いちばん近代化と情報化をとげているが、
近き将来太平洋暖流が集中して沖合を流れる。
日本列島、台湾、朝鮮半島南部、揚子江下流地域が、
世界で最も高密度の人口と情報と産業を保有する先進地域となるであろう。


今後の文明社会は膨大な量の水を必要とするので、
雨量の少ない地域は何らかの方法で真水の供給の安定をはからない以上、
大きな発展は望めない。






「得た知識を分解し、自分で編成しなおし、
自分で自分なりの原理原則を打ち立てることです。
自分でたてた原理原則のみが
応用のきくものであり、
他人から学んだだけではつまりません。」
(アルフレッド・セイヤー・マハン)


なんしか、カッコいい大人になろう。