2015年9月10日木曜日

【読書】残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 / 橘 玲」
を読みました。

本音の部分満載の知的な刺激に満ちた良書です。
目を背けたい残酷な現実をドライな語り口で、
人間皆平等。努力すれば幸せになれる的な建前の話
や漠然とした希望と説教じみた話など無しで。
大きな知的刺激を受けます。

人間は生まれながらに不平等だけど
それでも幸せに生きるための方法を提案しています。
自分のために気になったところを残しておきます。




適性に欠けた能力は学習や訓練では向上しない。
「やればできる」ことはあるかもしれないかもしれないけれど、
「やってもできない」ことのほうがずっと多いのだ。
こちらが正しければ、努力に意味はない。
たんなる時間の無駄ではなく、ほとんどの場合は有害だ。


身体運動的知能や音楽的知能は、
衆に抜きん出て優れていないと誰も評価してくれない。
それに対して言語的知能や論理数学的知能は
他人よりちょっと優れているだけで労働市場で高く評価される。

ライシュ以降、格差社会を論ずる人たちは
「教育こそすべて」と大合唱するようになった。

ひとの働く価値は、
「学歴」「資格」「経験(職歴)」の三つで評価できる。

好きなことを仕事にすれば成功できるなんて保証はどこにもない。
それでもぼくたちはみんな、
好きなことをやってなんとか生きていくほかはない。

狩猟採取の時代、
過酷な自然環境の中で人類の祖先は群れをつくって身を守ってきた。
群れから追放されることは、死を意味した。


ヒトは、たった一人では生きていけないのだ。
ぼくたちは、仲間はずれにされることに本能的な恐怖心を持つ。
これは石器時代や、そのさらに昔の猿と未分化だった頃にまで遡る宿命みたいなものだ。
それに対して貨幣空間は、
農耕と交易によって成立してからわずか一万数千年の歴史しかない。
ここに、ひとびとが貨幣空間にきわめてわずかな価値しか認めない理由がある。


実際には、石器時代の人類には、
愛(生殖)と友情(仲間)以外に大事なものなんかなかったのだ。
遺伝子のプログラムはそう簡単に変わらないから、
その末裔であるぼくたちも、
当然のことながら愛と友情のしがらみの中で生きていくしかない。



しっぺ返し戦略は、次のふたつの規則から成り立っている。
①最初は協力する。
②それ以降は、相手が前の回に取った行動を選択する。
このシンプルな戦略が最良のつき合い方なのだ。



面白いことに、困ったときにほんとうに役に立つのは
強い絆の「コネ」ではなく、弱い絆の「紹介」なのだ。



政治空間の基本は、
敵を殺して権力を獲得する冷酷なパワーゲームだ。
それに対して貨幣空間では、競争しつつも契約を尊重し、
相手を信頼するまったく別のゲームが行われている。
人間社会に異なるゲームがあるのは、
富を獲得する手段に、
①相手から奪う(権力ゲーム)、
②交易する(お金儲けゲーム)という二つの方法があるからだ。

政治空間の権力は複雑で、
貨幣空間のお金持ちゲームはシンプルだ。
必然的に貨幣空間が政治空間を侵食していく。


愛情や友情が支配する政治空間では
「お前は何者なのか」が常に問われ、
周りに合わせて「わたし」を変えていかなくてはならない。

それに対して貨幣空間は、
ありのままの「わたし」を受けていれてくれる。
愛情や友情に不器用で社会に適応できなかったひとたちも、
貨幣空間ならなんの問題もなく生きていける。
なぜなら、「わたし」が誰かはどうでもいいことだから。

荒唐無稽な実験の挙句、
脳には強い復元力があり、
ひとのこころは容易に変わらないことが明らかになった。
しかしその一方で、ほんのささいなきっかけから、
ひとには簡単こころを操られてしまう。
なぜなら、本人がそれを望んでいるからだ。

チャルディーニは様々な「影響力の武器」を取り上げているが、
そのなかでもっとも強力なのが
変報性(互酬性)の掟
―「なにかをしてもらったらお返しをしなくてはいけない」という
人間社会に普遍的な規則・習慣―だ。


営業の極意は、いかに顧客に好意を持たせるかだ。
ひとは、自分に似ているひとに好意を抱く。
スーパー営業マンは絶世の美女や白面の美男子ではなく、
誠実そうで平凡な容姿をしている。


新車を買うと付属品を勧められる、
車本体価格に比べ割安に感じられ、
ついつい財布のひもが緩んでしまう。
このコントラスト効果は、
販売マニュアルの基本中の基本だ。
中古車のディーラーでは、
最初に魅力のない車を何台か見せておいて、
その後で割高だがそこそこの車を案内する。
宝石店では逆に、とうてい手の届かない高額商品を最初に見せて、
クレジットカードの分割払いならなんとか買えそうな商品を進める。
いまだにぼくたちは、
こんなに古臭い心理トリックに簡単に騙されてしまう。

報返性とならんで興味深いのが
「コミットメントと一貫性」だ。
これは簡単にいうと、
「一度決めたことは取り消せない」という法則だ。


リーナスは、人生にとって意味があることは三つあり、
それは段階を追って進化していくという。
第一段階は、生き延びること。
第二段階は、社会秩序を保つこと。
第三段階は、「楽しむこと」。


アメリカの心理学者エドワード・L・デシは、
簡単な実験によって、
金銭的な報酬でやる気がなくなるという
奇妙な心理を証明した。


能力があろうがなかろうが、
誰にでも好きなことで評判を獲得することはできる。
だとしたら必要なのは、
その評判を収入につなげるちょっとした工夫だ。


ロングテールのフラクタル構造に注目すると、
「負け組」とひとくくりにされるサブジャンルの中にも
「勝ち組(ショートヘッド)」がいて、
さらにそのサブジャンルのテール部分に虫眼鏡を当てれば
やはり「勝ち組」が見つかる。


大事なのは、
マイケル・ジャクソンのような時代のアイコンを目指すことではなくて、
自分の好きなジャンルでショートヘッドになることだ。



「好き」を仕事にしたいなら、
ビジネスモデル(収益化の仕組み)を自分で設計しなくてはならない。



生物は自分に適したニッチ(生物的地位)を見つけることで、
過酷な進化の歴史を生き延びている。







「この世界は残酷だ…
そして…とても美しい」
(ミカサ・アッカーマン「進撃の巨人より」)

なんしか、カッコいい男になろう。


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