2015年5月21日木曜日

【5月】この失敗にもかかわらず【この季節に読みたい詩】

本日は気分を変えて、詩を紹介します。
じっくりと読んでみるってのはどうでしょうか。
茨木のり子さんの詩は、時に厳しく時にやさしい。
何て、感受性豊かで、表現力に富んでいて
人間的で味わい深い詩なんだろう。
あまり、詩は読まないけれど、この方の詩は別腹です。
じっくり、読んでみてください。




この失敗にもかかわらず

             茨木のり子



五月の風にのって

英語の朗読がきこえてくる

裏の家の大学生の声




ついで日本語の逐次訳が追いかける

どこかで発表しなければならないのか

よそゆきの気取った声で

英語と日本語交互に織りなし


その若々しさに

手を休め

聴きいれば


この失敗にもかかわらず……

この失敗にもかかわらず……

そこで はたりと 沈黙がきた

どうしたの? その先は


失恋の痛手にわかに疼きだしたのか

あるいは深い思索の淵に

突然ひきずり込まれたのか


吹きぬける風に

ふたたび彼の声はのらず

あとはライラックの匂いばかり


原文は知らないが

あとは私が続けよう

そう

この失敗にもかかわらず

私もまた生きてゆかねばならない

なぜかは知らず

生きている以上 生きものの味方をして







きっと、この新学期の環境の変わった緊張感が残り
五月病という言葉もあるように、何とも言えない不安が付きまとう
この五月だから気持ちの切り替えを必要としていると
そっと諭してくれているのかもしれません。
だから「この失敗にかかわらず」というフレーズが、
心に響くのかもしれませんね。




「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」 
(茨木 のり子)

なんしかカッコいい大人になろう。